《MUMEI》

「それなら、孝太に受験用のローファーでも選んでもらったほうが良かったかな?」


俊彦が言うと、歌穂子さんは『それはまた買いに来ますから』と言って笑った。

「そう?…じゃあ、はい、皆、注目!!」


俊彦の言葉に、皆が注目した。


「食べ終わったらここに集合して! これからがメインイベントだよ」


『イベント』


その言葉に、皆が素早く行動した。


(好きだよね、イベント…)

お腹の大きな瞳さんと薫子さんまで自分で座る椅子を自ら持って移動しようとしていた。


さすがに、それは、春樹さんと克也さんが止めたが…

二人は、『私達妊婦だから』と一番見やすい位置に座った。


「ささ、お姫様方、座って」


俊彦がそう言うと、椅子を持った和馬と孝太が現れ、歌穂子さんと律子さんを座らせた。


「雅彦、靴をお持ちして」

「はい」


雅彦が、靴を二足持ってきた。


それは二足とも、秋色ーワインレッドのパンプスだった。


歌穂子さんの前には、リボンがついた、つま先の丸いローヒールのパンプス


律子さんの前には、装飾のない、つま先のとがったハイヒールのパンプスが、それぞれ置かれた。


「出番だぞ二人共」

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