《MUMEI》

部屋に戻るとやっと外された。

「ひむろひゃま……顎がまだ緩ひれす」

涎が漏れる。

「これに懲りたら俺の命令はちゃんと聞くんだ、いいな?」

氷室様は語気を強めた。

「ひゃい!」

いまいち締まらない返事をしてしまう。

突然、氷室様が僕の顎に手を添えて唾液を親指で拭ってくれた。

「ふん、顎は外れなかったな。」

「ふわ、」

僕の唇を親指でめくる。

「歯並びも良い虫歯も無かった、何より


開口器は医療器具だ。」

氷室様はそれだけ言うと浴室へ入って行った。




……もしかして、氷室様は僕のことを心配してくれていた?!

氷室様の手から頂いたもの以外食べてはいけない=虫歯を心配してくれていた?!

それなら合点がいくじゃないか!

だから口の中をミネラルウォーターで濯いでくれたり殺菌するためにあんな器具で唾液(本当に殺菌するか不明)を垂れ流させてくれたりしたんだ!

僕なんかの為に………………なんて氷室様は良い人なのだろう。

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