《MUMEI》

『ねぇ…。ももた。
[サンマは七輪に限る]とか言っちゃってさ〜。
本当はまだ、ガス使えないからなんじゃないの!?』




『まぁ〜そんな細かい事は気にしいなや!
ガスも明日には使えるように手続きしたし、オールOKや(笑)。
それより何[世界中の不幸背負ってます]みたいな顔して歩いてたんや!?』




『…そんな顔してません。ただ…ちょっと考え事をしてただけ…。』




『考え事って?なんや?』




『う〜ん。どうすれば、自分の気持ちをうまく伝えられるのかな…って。
どうすれば、人って分かり合えるのかな…って考えてたの。』




『ほぉ〜。
そりゃ、またデッカイ悩みやな。大変や〜!!』




『…ももた。真面目に聞く気ないでしょ?』




『ある!ある!!
めっちゃ聞く気満々や。
ちょっとサンマに夢中になってしもたけど(笑)』




『…もういいよ。』




『いや。サンマはもう、食い終わった!大丈夫や。
…で、咲良は何でそんな事考えだしたんや!?』




『何でって…。
だってさ…自分の気持ちをうまく伝えられたら、変な誤解や不安なんて無くなるのに…って思って。』




『…う〜ん。
そうか!?誤解や不安なんてもんは、好きやったら当然、起こるんちゃう?
ただ…自分の気持ちを伝えられへん理由は何や!?
相手の事を考えて…?
それとも…自分の為…?
どっちや!?』




『……自分の為かも。』




『そらっ。あかん。
俺は、基本的に自分にブレーキをかけるんはキライや。そんな事したら、クセづく。逃げグセついたら、おしまいや。
相手を考えての事とちゃうんやったら、咲良は変わらなあかんのちゃう?』




『…分かってる。
でも、彼に嫌われたくないの…。』




『咲良は色々考えすぎや。動き出すんが怖くて、なんやかんや理由を付けて逃げてんのや。
キツい言い方やけどな。』




『…ねぇ。ももた。
ももたは、彼女に隠し事とかないの?』




『ないで!!』




『彼女も、ないと思う?』




『あ〜考えたことないな。あるんやろか?』




『今って遠距離でしょ?
不安になったりしない?』




『…う〜ん。
会いたくなったら、会いに行く。不安になったら話し合う…。
それで俺は、ええ感じやと思うけどな〜。』




『そう…。』




私の悩みって何だったんだろう…。




ももたと話してると、自分が小さく感じる…。




七輪の煙が目にしみて、涙が出た…。




『何泣いとんねんっ!?』




と言って爆笑するももた。




『あんたと七輪に泣かされたのよ〜〜!!』




ベランダで大声を出して叫んだ。




『うるさい!!』




すぐに下の階の住民から、怒られてしまった。




私たちは、顔を見合わせ、口を押さえながら笑い合った…。




『(お前のせいやぞ!)』


『(あんたのせいでしょ!)』


『(なんでやねん!)』


『(何がよ!)』




なんて言い合いながら、
また笑い合う……。




“久しぶりだな…こんなにバカ笑いしたの。”

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