《MUMEI》

◆◇◆

 彩貴が邸に戻ったのは、寅の刻だった。

「彩貴ー」

 声がするや否や、三匹の妖が彼の前に飛び出してきた。

 うっすらと妖気を纏っている為、くらい中でもその三匹の姿はぼうっと浮かび上がって見える。

「何か用か」

「いや、何もないけどー」

「なら出て来るな」

 彩貴の言葉に三匹は口をつぐみ、しゅんとしたが、琥鬼が顔を上げて言った。

「そういえば彩貴、何しに行ってたんだー?」

「別に言う程の事では無い」

「また出たのかー?」

「‥‥‥‥‥‥」

「彩貴‥?」

「お前達はあいつの所に戻れ。相手をする暇は無い」

「はーーーーい‥」

 三匹はつまらなそうに長ったらしい返事をし、戻って行く。

 彩貴はそれを見届けると、闇の空を見上げた。

 朧に浮かぶ、下弦の月。

 冷たくなり始めた秋風が、ざわざわと葉をゆらす。

◆◇◆

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