《MUMEI》
第二十五話:激闘
 TEAM本社。
 柔らかな日差しが届く救護室で眠っていた紫織に、
 優しい美女が視界に飛び込んできたのである。

「ごめんね紫織ちゃん。白ちゃんの家の病院にいっていたから、
 痛みが少し長く続いちゃったわね」

 やんわりとした口調で申し訳なさそうに夢乃は謝った。

「ごめんなさい、夢乃さん」
「どうして? 紫織ちゃんが謝る必要はないわ」

 さらさらとした紫織の髪を指で梳かしてやると、
 紫織は涙を浮かべて答えた。

「だって、私が翡翠を助けられなかったから、翡翠が捕まっちゃったのでしょう!」

 それに対して夢乃は首を横に振った。

「それは違うわ。それに大丈夫。
 私も今から戦線に出るから、紫織ちゃんはゆっくり眠っていてね」
「えっ! だけど夢乃さん!」

 止める前に、夢乃は姿を消した。
 紫織の頭の怪我を完全に治して・・・・

 その頃ブラッド本社では・・・・

「ほう、これはこれは、TEAMに逃げ込んだ馬鹿息子の仁と智子殿じゃないか」

 癇に障る言い方を尊氏は選んだ。
 そのほうが面白いといわんばかりに・・・・

「今度はその目だけじゃなく、口まで消してやろうか?」

 仁は殺気を放った。
 智子はまったく相手にせず、快たちを逃がす方法を考えている。
 二人相手でも、この目の前にいる男にかなうかどうかは疑わしい。

「随分口も悪くなったな。義臣の影響か?」
「残念、社長は普段はだれているんでね、
 素行の悪さはあんた譲りだと思えよ!」

 快達は初めて本気の仁を目の当たりにした。
 これがあの優しい氷堂さんだとは思えなかった。

「そうか。ならばその親としてやらねばならないことは一つだけだ」

 手に光が集中し始める。
 間違いなく危ない!

「お前を葬り去る!」
「やらせるか!」

 衝撃が鼓膜を突き破ろうとするのを感じた!
 速く、何も見えない!
 これが達人といわれるバスターの本気だ!

「快ちゃん、この場から決して動かないでね」
「智子さん?」

 智子は結界を張ると、衝撃の中に飛び込んだ。

「氷堂尊氏! 掃除屋界の危険因子としてお前をつぶす!!」

 智子の手に雷光が走る!

「喰らえ!」

 手から放たれた雷光は尊氏の残像を消し、さらに本体を追いかけ始めた!

「ちっ!」

 尊氏も仁の行動と智子の攻撃を見ながら、
 確実に二人をしとめる戦略を練り始める。それだけの余裕があったのだ。

「快ちゃん・・・・」

 白真の呟きに快は耳を澄ませる。

「このままじゃ二人とも殺される・・・・!」

 それは快自身も感じていたことだった・・・・

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