《MUMEI》
兄貴



「料理の腕また上がったね」


「…そう?」



俺は冷蔵庫を開けて缶ビールを出す。


「兄貴ビールは?」



「あ〜要らない、ホテルに戻んなきゃなんないし」




俺はビールをぷしゅっと開けて、飲みながらテーブルに着く。





兄貴はお袋から預かった土産をわざわざ置きにここに戻ってきたらしい。



つか、裕斗に頼まれて実家に日中電話した時、お袋何も言ってなかったから兄貴がこっちに来てるの知らないとばかり思っていた。







…俺の好きなメーカーのきしめんセット。





これ、中学生の頃夜食によく茹でて食べてた…。




「…こんな事ならホテルに荷物置いて来るんじゃなかった、な〜俺折角出てきてんだぜ?
戻れんなら戻れるで電話の一本よこせよな、彼氏とイチャコラしてー気持ち分かっけどさー、久しぶりの兄弟の再会だぜ?
セックスなんか一日位我慢しろよな」


「――!セッ…!か、彼氏って…」




「お前らキスしてたじゃん、

――すっげびっくりした」



「―――」






兄貴は空になったグラスに麦茶を注ぐ。




「…お袋から聞いてると思うけど俺、先月から実家戻ってっからさ」



「…聞いてる、実家から大学通いきれんの?」



「元々通えたのに一人暮らししてみたくて出てただけだったし?まー車で40分だしな、毎月の家賃よりちょっとした車の方が安く済むからお袋も喜んで車まで買ってくれたよ」







兄貴は俺と年子で20歳、大学生だ。




物心ついた頃から身長が変わらず良く双子だと間違われてきた。
つか、俺が髪型をかえれば同じ様にかえ、
服装も真似をされていた。どうしてそんな事をするのか不快に感じていたが、


それは兄貴に、俺の首にナイフで切りつけられた時に全て把握した。




あの時の記憶は恐怖の為か、かなり曖昧だけど……。




それは全て仁が俺に教えてくれたから。




……。

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫