《MUMEI》

昨日は楠先生が救急車で運ばれた。
全身痛い……。

氷室様は手加減しないのだもの。



「金色夜叉か、珍しいのを読んでいるな。」

楠先生代理のお爺さん先生に声を掛けられた。

「読書感想文で書くために読んでいました。」

「貫一はお宮が金持ちに嫁がされることで高利借しになるんだったな。」

「主人公が悪人になってしまうし、未完なんで難しいです。」

蹴り上げたいためだけに氷室様は薦めたのだろう。

「しかし、戦後のバタバタで発見が遅れたらしいがお宮には嫁いだ理由があり、主人公貫一は稼いだ金を義のために使い果たしたという設定のメモが発見されたらしいぞ。」

それは知らなかった……!

「きちんとしたものでないから定かではないらしいがな、そういう終わりならいいと想像したりするのも楽しいだろう?」

「……はい!」

まさか、氷室様はそれを伝えたいがために……?!





「おい、タマ!」

氷室様が呼んでいる。

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