《MUMEI》
恋人達
環さんと早苗さんを部屋に呼んだ。

「ええ!?双子だってこと発表するんですか!?」

「また急ね」

「……すみません。でもふたりで決めたことですから」

「あっ別に反対するとかじゃなくて、良かったなと思って」

そう言ったのは早苗さん。不思議そうに有理が聞き返す。

「良かった?」

「これからは恋人はあなただって言えるでしょ?」

有理は顔を赤くさせた。

環さんが「あ――っ照れてます!」と有理をからかった。

「環さんも嬉しいですか?」

すると環さんもすぐに顔を赤くさせ、小さくうなずいた。

それを見て、有理が環さんをからかう。

ふたりの言い合いは終わりそうにない。

「……残念なことと言えばひとつだけ」

早苗さんが小さく呟いたのが聞こえた。

「何ですか?」

言い合いを続けるふたりをおいといて、早苗さんに尋ねる。

「双子だってこと、私達の他に誰が知ってる?」

「ええと、マネージャーと事務所の社長……くらいです」

「じゃあ現時点では4人と言う訳よね?たった世界で4人の人間しか知らない秘密がもうすぐ誰もが知ってる当たり前のことになろうとしてる。それが私にとって唯一残念なことよ」

……なるほど。そういう考え方もあるんだな。

「大丈夫ですよ。ふたりだけの秘密とかこれからたくさんできてきますから。……もうすでにあるんじゃないんですか?」

オレがいじわるく言うと、早苗さんまで顔が赤くなった。

「なんで早苗まで顔赤くさせてんだ?」

事情を知らないふたりは口ゲンカを止めてもの珍しそうに早苗さんを見る。

これで恋人達はOKだ。これからはその後の心配をするだけ。

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