《MUMEI》

「蝶子!早く!」


私はすぐに俊彦と手を繋ぎ、走り出した。


私は、足は遅くはないが、早くも無かった。


瞳さんにお礼を言って走り出した雅彦の足音が迫ってくるのがわかった。


(え?)


その時、私の体が浮いた。

「しっかりつかまってて!」


言われる前に、私は全速力で走り出した俊彦にしがみついていた。


「兄貴、それズルイよ!」

雅彦が叫んだ時、私をお姫様だっこした俊彦は、ゴールテープを切った。


…のだが…


当然


…失格になってしまった。

「じゃあ、せめて、ボーナス点だけでも…」


「ちょっ…」


俊彦の顔が近付いてきて、私は焦ったが…


そんな俊彦を、他の皆が許すはずは無かった。


結局、このレースで、俊彦は無得点だった。


今日は祝日で、歌穂子さん律子さんも来ていて、見事に律子さんを選んだ勇さんは、去年のように『ごめんなさい』はされなかった。

ただし、祐介さんは、条件に合う人が麗子さんで、手を繋ぐことすら拒まれ、ゴールにたどり着く事ができず、俊彦と同じように無得点だった。


そして、運動会の結果が発表された。


一位は、…雅彦だった。


「やったぁ!」

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