《MUMEI》

「くそ〜、逃げられた」


勇さんはその場に座り込んだ。


「いいじゃん、俺達運命共同体なんだから」


「違うだろ、今は!俺にはりっちゃんが、お前には歌穂子ちゃんがいるだろ」


「まぁまぁ、紅白コンビは永遠に不滅って事で」


「うわ、抱きつくな!」


「「…」」


そんな二人のやりとりを、律子さんと歌穂子さんは複雑な表情で見つめていた。

「あいつら、まだ女心がわかってないな」


(確かに…)


俊彦の言葉に、私は苦笑した。


しかし、律子さんと歌穂子さんが『もう帰る』と言うと、勇さんと祐介さんは、すぐに漫才をやめた。


「「ごめんよ」」


「「…もう、いいよ」」


四人は仲良く運動会の片付けをしていた。


律子さんはほぼ毎日商店街に顔を出すようになっていたが、次に歌穂子さんが来るのは、旅行の時だった。

そう考えると、私は優勝の権利が祐介さんに渡って良かったと思えた。


しかし、俊彦は、片付けを終えても、いつまでも不満を訴えていた。


不満を言わなくなったのは…


その夜。


私が俊彦のベッドの中で理由を説明した後からだった。

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