《MUMEI》

ももたに相談してから、私の気持ちは、何だかとても楽になった…。




変なコンプレックスで悩んでいたんだと、今では笑えてきた…。




平日は、吉沢さんと。
週末は、ももたと。




ってな感じで、毎日楽しかった。




『なぁ〜聞いてもええか?何でお前、週末いっつも俺の店に邪魔しにくるわけ?彼氏は会われへんのか?』




『い〜じゃん別に。
私、オープン前から手伝ってたんだよ〜。
彼氏は…ま〜色々あんの。この店…何だか落ち着くし。好きなんだもん!』




『まぁ〜好きにしたら?』




ももたは、私を邪魔者扱いするけど知ってるもん!
ちゃんと私の分のコーヒーも買ってくれてんじゃん。




『おい!ほんで、お前今日も最後まで居てる気?』




『あ〜今日はもう帰る。
彼氏が家にゴハン食べにくるんだ(笑)。』




(吉沢さんからメール着たんだ!今日は奥さんのとこから早く帰るって(笑)!)




『じゃ!!またね!』




家に帰ると吉沢さんがもう家の前で立っていた。




『ゴメーン!待った?』




『どこ行ってたんだよ?
何度も電話したんだぞ。』




『うそ?全然気付かなかった…。ゴメン〜。ももたの店に行ってたの。』




『ももた…?あ〜隣に住んでる同級生の奴?』




『そう。すぐゴハン作るから!待ってって!』




『おう!腹減った…。』




今日の吉沢さんは、とても疲れているように見えた。




『ね〜?なんかあった?』




『あ〜ちょっとな。
嫁の母親は、近所でも有名な[お見合いおばさん]なんだけどさ〜。
俺の姉に紹介したい人がいるってしつこくてさ…。』




『…お見合い!?吉沢さんのお姉さんに?』




『あ〜。俺に一つ上のアネキがいるんだけど、まだ独身なんだよ。
今は、彼氏もいないし会うだけでもって…。』




『…お姉さんいたんだ?』




『うん。しばらく会ってないけど、たまに連絡はとってるよ。』




『別に会うだけなら、いいんじゃない?お姉さんに話してみたらいいのに。』




『あ〜!駄目。駄目!!
俺のアネキって、全く男っ気ないもん!
今まで男と付き合ったことね〜んじゃないかな(笑)?って…26歳で、それはさすがに無いか!?』




『…………。』




私は、なんて言っていいのか、分からず聞こえないふりをしてしまった…。




『やっぱり咲良も“ひいてる”!?』




『ひいてない!
ひいてなんかないよ!!』




『そんな必死に否定しなくてもいいけどさ(笑)』




『…やっぱり。
…やっぱりさ……。
26歳で恋愛経験無かったらみんなは“ひく”のかな?』




『そりゃ“ひく”でしょ?俺だったら…ひくな。』




『…そっか。』




私は、ズルい聞き方をしてしまったのかもしれない。




でも、吉沢さんの本心が聞けた気がした…。




“やっぱりイヤなんだ。”




そう思ったら、彼との関係を続けられないと思った。



初めて“別れ”の文字が頭に浮かんだ…。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫