《MUMEI》 十六夜 在りし日を思へど◆◇◆ 「‥‥元気がないようだな」 「いや‥そんな事は」 無い、と彩貴に言いかけた夜桜の言葉を、風牙が遮った。 「姫ー、散歩に行かないかー?」 「止せ、風牙」 彩貴が咎めた。 「でもさ、ずっとこのままじゃ姫が可哀相だぞ‥?」 「‥‥‥‥‥‥‥」 それは、彩貴自身も痛い程分かっている。 だが夜桜の調子を取り戻す事が出来るのは狐叉だけなのだ。 「───────」 肩で黒手毬が遊んでくれとばかりに飛び跳ねていたが、夜桜は空ろな目をしたまま、只空を見つめるばかりだった。 ◆◇◆ 前へ |次へ |
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