《MUMEI》

「あんなやつ関係ないだろ、今持ち出してくるな!」

やはり、徳和は禁句であるようだ。

「キスしてだだろ」

公園で濃いやつを。

「キスしたら何?恋人になれるの?」

胸に突き刺さった。

「そうは言ってない。飲み過ぎだ。」

「飲んで悪いか!俺の体だ、お前には関係ない!」

何処の親父だ。

「……徳和が好きなくせに誰にでもするなって言ってるんだ。」

言わせるな。

「馬鹿にしてるのか!俺がお前にキスしたのはその価値があったからだ!

俺にはもう何も無いから、お前が一人でフェンス越えてく勇気くれたっていいじゃないかあ……」

是清も俺のこと、覚えていたのか……。

「なんだ、俺のこと、そんなカッコ良く見えてたんだ……。」

「イイ男だって言った。」

是清はふて寝し、目を潤ませた。

「……あんたはガキみたいだな。」

それもかなり我が儘なガキだ。

「……よく言われる、乙矢はかーちゃんみたいだ。」

「こんなデカイかーちゃんいるか。」

「此処に。」

是清は俺のバスローブの裾を掴んだまま寝た。


「……やっと大人しくなった。」

寝床を手に入れただけでも幸運だったか。
こんな奴でも生きていられるんだ、なんだかどうでもよくなるな。




エキセントリックな奴だ。

俺、今日ほぼ是清の介護の記憶しかないし。
感謝はしている。

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