《MUMEI》

◆◇◆

「‥‥‥‥‥?」

 微かな寒気を感じ、夜桜は薄目を開けた。

 まだ子の刻だ。

 月の位置は僅かに傾いていたが、影は相変わらず長く伸びている。

 妖達を抱え込みつつ、ふと懐かしい感覚がし、夜桜は微笑を浮かべた。

 どうやら、夢を見ていたらしい。

――ねぇ、そういえば七狐さん、お名前は?

――名前‥?

――うん。

――妖に名前など無い。

――ない、の?

――ああ。

――じゃあ、付けてあげる。

――お前が‥?

――うん。ええと‥、狐叉。

――狐‥叉‥?

――他のがいい‥?

――いや、それで構わん。

――じゃあ狐叉、宜しくね。

◆◇◆

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