《MUMEI》

こんな風に椎名とハンドボール以外の話をするのは初めてだった。


好きなアーティストが一緒。


それだけの理由でも結構話せるもんだ。


「ここ真っ直ぐ行けば着きますよ。」


「ふ〜ん。…メールして。」


「はい?」


「今から行くって。」


「今更!?」


「何か早めに言ったら逃げられんじゃないかと思ってさぁ〜。」


(そこまで考えるかフツー?)


『今からクロさんとお前ん家行くから。』


「あ、ここです。」


「おぅ。」


車を止める。


そしてメール。


『着いた。』


車の中で待っていると、凄い勢いで玄関のドアが開いた。


「何しに来たんすか!?」


「お〜っす。」


「いや、だから何で?」


「お前が来ないからだろ!!」


椎名が怒鳴る。


「練習も試合もサボりやがって!!」


「…」


急に黙り込む千秋。


「あのさ、千秋。」


僕が口を開く。


「はい?」


「練習キツかったか?」


「…そうじゃないす。」


「…?じゃあ何?」


「何か…、皆どんどん上手くなってるのに、自分ついてけてないから…」


「お前…、つまんね〜ことで悩んでたんだな。」

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