《MUMEI》

千秋の家を後にして、椎名を送り届ける。


「悪かったな。明日迎えに行くから。」


「え!?いいすよ!!」


「いやいや、だってチャリ学校だろ?今から帰るのだりぃ〜じゃん。」


「いや…でも…。」


「いいから!!後輩が遠慮すんな。」


「すいません!!」


「いいよいいよ。」


「あの、クロさん?」


「何?」


「千秋にあんなこと言ってましたけど、見込みあるんすか?」


「…ない。」


「え?」


「今んとこノースキルだからな。あいつ。」


「…じゃあ何で?」


「僕なら、なんとかできると思うから。」


「…は?」


「あいつに自信がなくても、僕には自信がある。」


「…」


「僕なら育てられるって自信がね。」


(この人…、自分の自信だけであそこまで言ったのかよ?)


「クロさん。」


「何?」


「千秋は、自分がハンド部に誘ったんすよ。」


「へ〜。」


「スポーツは出来なかったけど、いい奴だったから…」


「それだけかよ!!」


「でも…」


「あ?」


「自分が誘った奴にハンドつまんないなんて思われたくないんす。」


「…ふ〜ん。」


「マジでどうにかなると思いますか?」


「…うん。」


(どんな自信だよ…)


心の中で突っ込みを入れながらも、椎名がクロを疑うことはなかった。


根拠のない自信に、どこか期待していた。

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