《MUMEI》 (意地悪だなぁ…) 私はうつ向いた。 「では、失礼します」 俊彦はひざまずいて、そんな私の顔を覗き込んだ。 私は慌ててスカートの裾を押さえた。 俊彦は、うっとりとした表情で私にロングブーツを履かせた。 ショートブーツよりも、触る範囲が広いので… うっかり出そうになる声を、唇を噛み締めて我慢した。 「具合、悪いの?」 「だ、大丈夫です」 律子さんの言葉に私は慌てて答えた。 「じゃあ、立ってみて」 俊彦に言われ、私は急いで立った。 「わ…」 いつもより視点が高い。 「どう?」 立ち上がった俊彦の顔も近い。 (でも…) 「何だか、グラグラする」 私は不安を口にした。 「歩ける?」 俊彦に言われ、ゆっくりと歩いてみるが、うまく歩けない。 「あ…」 「大丈夫?」 よろけた私を俊彦が支えた。 「ハイヒールの蝶子、いいな…俺無しで、いられない感じが」 俊彦の甘い囁きに、私はクラクラして、余計動けなくなった。 そして、何とか座った私は、迷わず歩きやすいローヒールのロングブーツを選んだ。 律子さんは、結局ワインレッドを選んだ。 前へ |次へ |
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