《MUMEI》

「どうもありがとう」

「じゃあ、またね」


「…ありがとうございました」


私と律子さんを見送る俊彦は、少し寂しそうに見えた。


私達は、再び駅前に向かって歩いていた。


「律子さんて、すごいですね」


「慣れれば、平気よ。買って、練習すればいいのに」

笑顔で言う律子さんに、私は『無理ですよ』と言った。


(だって、絶対俊彦が手伝うって言いそうだし…)


上手く歩けない事をいいことに、セクハラされそうな気がした。


赤くなる私を見て、頭のいい律子さんは全てを悟ったようだった。


そして、律子さんは『当日まで内緒にしたいから』と

勇さんには会わないで、電車に乗って帰っていった。

(ハイヒールで階段も楽々なんてすごいな)


私は律子さんを見送りながら、ひたすら感心していた。


私は、ハイヒールは無理だと、二度と履くつもりは無いと、この時は思っていた。


そんな私がハイヒールを履く事になるのは、もう少し先の事になる。


とにかく、私はローヒールのロングブーツを履いて、旅行に行く事になった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫