《MUMEI》
――激動
裕斗は俺をすっぽりと抱きしめてくれ、また俺以上に力強くかえしてきた。
「大丈夫…、俺も傍にいるからな?惇…惇」
「裕斗…俺ゴメン、俺、勝手に嫉妬した、…ゴメン、ゆうと」
「?…―――俺こそゴメン、勝手に当たりくれて…惇のお袋あんまり綺麗だから嫉妬しちまったんだ…ゴメンな」
「…ハハッ、…そうなんだ…ハハッ…」
「うん…ゴメン」
名字呼びされて、
なんか裕斗が遠く感じて勝手にテンション下げて落ちこんだバカな俺。
いつもじゃこんな事気にも止めないのに…。
自分でもわかっている。
精神的に追い込まれている時は些細な事がきっかけで…
頭が…全身が…
暴走する…。
「――伊藤さんは?」
「そこのコンビニで別れた、隆志は?」
「うん…―――――俺も…コンビニで…別れた……」
…俺は嘘をついてしまった。
何故か今、俺は隆志より裕斗の傍に居たくて堪らない…。
「な、雨また降りそうだし中入ろ?
風邪引いてもつまんないし」
酷く優しい声。
裕斗の声はいつも甘い…。
――ネコの様に膝の上で丸まりたくなるって感じ。
「ヤだ…帰りたくない…」
胸に頭をすりつける。
イイ匂い…いつものブルガリの匂い…。
「……じゃ、俺んちだな、今日真菜もいないし…おいでな」
「うん…、真菜ちゃんどうしたの?」
「今日は内藤君ち…、彼火曜はオフだから」
「――そうなんだ…」
▽
俺は裕斗に支えられる様に歩きだす。
――まさか…外の窓から兄貴が一部始終見ていたとも知らずに……。
そして…裕斗に肩を抱かれ…俺は自分の気持ちに気がついてしまった。
▽
――俺は…裕斗も…好きなんだ。
――親友としてじゃない。
肌を…合わせたい対象として。
マンションにつき裕斗は鍵を開けだす。
俺より頭半分以上背が高くて、横顔が整っていて…。
特に最近は…この一年ですっかり男っぽくなった。
玄関に入りドアが閉まる頃には、
俺は裕斗の首に腕を回し…キスをしていた。
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