《MUMEI》

私は、去年のような仮装を心配していたが、隣の俊彦は、部屋割の事をいつまでも気にしていた。


(もう決まった事だし…)


そして、バスはヨネおばあちゃんの孫夫婦が経営する、湖畔のプチホテルに到着した。


湖の周りにはレジャー施設や美術館もあり、大人も子供も楽しめる環境だった。

「いらっしゃいませ」


出迎えてくれたのは、ヨネおばあちゃんの孫夫婦と、ひ孫二人・それに、二人の従業員だった。


私達は、小さなフロントで、長蛇の列を作り、鍵を受け取った。


荷物も、自分で運ぶ。


建物は、二階建てで、三分の二の客室は、二階にあった。


私が泊まるのは、一番端にある三人部屋だった。


鍵は律子さんが持っていた。


「じゃあね」


律子さんは隣の部屋の入口を開けようとしている勇さんに声をかけた。


「またな」


勇さんは笑顔で答えた。


「またね」


「うん」


私と同室の歌穂子さんが、勇さんの後ろにいる祐介さんに声をかけた。


「俊彦…」


「嫌だぁ〜!」


「「諦めろ!」」


俊彦は、祐介さんと勇さんに部屋の中に引っ張られた。


「結構聞こえますね」

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