《MUMEI》

私は結局…何も言えないまま、別れを告げることも出来ないまま…吉沢さんと付き合い続けた…。




どうしたらいいのか分からなかったけど…
ただ“吉沢さんの傍に居たかった…。”




『咲良。最近、元気ないけど…どないしたん?』




週末、分かりやすくテンションが落ちている私を見て、珍しく、ももたも心配してくれた…。




『…別に。ももたには、一生理解出来ない悩みだからほっといて…。』




『なんや!!
その言いぐさは!?
ケンカ売っとんか!?』




『…別に。』




『なんやねん!?
ホンマに!いつもの咲良らしないで!?
俺かて、なんか役立つかもしれんやろ?
話してみ。俺に出来ることやったら協力するから!』




『…うん。ありがと。
またいつかね…。』




ももたにだって言えるわけなかった…。




どうせ、吉沢さんみたいに“ひく”に決まってるんだから…。




家に帰る途中、メールがきた。




┏━━━━━━━━━┓
┃俺、今日は嫁の実家┃
┃泊まるから。朝イチ┃
┃の電車で帰って、 ┃
┃そのまま仕事に行く┃
┃ことにした。   ┃
┃あと、来週…嫁の家┃
┃に、従兄弟が泊まり┃
┃くるらしいから、俺┃
┃来なくていいって。┃
┃来週は、咲良ん家に┃
┃泊まれるから(^O^)/┃
┗━━━━━━━━━┛




吉沢さんが初めて絵文字入りメールを送ってきた…。




“吉沢さん、よっぽど嬉しかったんだ…。”




“………………。”




来週、私の家に泊まる!?




うそー!!!?




その日から私は、眠れなくなった…。




吉沢さんは会うたび、




『来週なっ!!』




って嬉しそうに言うから、“もう断れない”って思った。




でも、全てを話すことも出来ない。




お姉さんの話をしていた吉沢さんの顔が、繰り返し浮かんでくる。




“俺ならひくな。”




私に向けられた言葉だ…




もう無理…。




誰か助けて……。




吉沢さんが家に泊まりにくる前夜…私の不安は爆発した。




部屋中のありとあらゆる物を壁に投げつけた…。




大声で叫びながら泣き喚いた…。




ドンドンドンドンッ!!




『咲良!!咲良〜!?
どないしたんや!?
大丈夫か?ドア開けや!』



ももただ…。




『うっ……うっ………
………ももたぁ〜!!』




私はドアを開けるなり、ももたに抱きついた…。




『……ももた。
…助けて……私…
もう……無理だよ……
…苦しいよ………。』




『…咲良。…落ち着け。
…もう大丈夫や!
…なっ?……咲良。』




ももたは、動揺していたようだったけど、必死で私を慰めてくれた…。




しばらくして、泣き疲れた私を見て、少し落ち着いたんだと安心したももたは、




『もう大丈夫やな?
お前の部屋はガラスも飛び散ってるし危ないで、今日は俺の部屋に泊まり。
俺、掃除しとくで。』




と言って、自分の部屋に連れて行ってくれた。




『……ももた。
…お願いがあるの……。』




私は、ももたの手を掴んで信じられないお願いをしてしまった…。




ももたに嫌われてもいい。




吉沢さんにさえ、嫌われなければ……。




本気でそう思っていた。

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