《MUMEI》

◆◇◆

 夜桜は三年程前まで、彩貴が兄だという事を知らずに育った。

 何故彼がその事を隠してまで陰陽師をしているのか、その答えは夜桜にすら定かではない。

 彼は何も話そうとしない上、何よりも妖を嫌っていた。

 夜桜は度々彼に歯向かっては、妖達を連れて邸を飛び出したものだ。

「なぁ彩貴‥‥」

「‥?」

「すまなかったな、色々と‥迷惑をかけて‥」

 すると、彩貴は苦笑した。

「いや、迷惑などと思った事は一度も無い」

 彩貴を見つめたまま、夜桜はきょとんとする。

 自分の才が、どれ程彼を悩ませただろう。

 ましてや妖達と共にいるとなれば、尚更の事であったに違いない。

 だが彩貴は、只穏やかな微笑を浮かべていた。

◆◇◆

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫