《MUMEI》

「氷室様、変なしこりができました。」

内腿を擦り合わせて血が止まった場所から確認した。

「これを塗ってやろう。」

チューブに軟膏のような物が入っている。
氷室様はプラスチックのスプーンの裏側で僕の赤くなった患部に塗布してくれた。手錠に繋がれてされるがままである。

「ヒッ、氷室様!熱いです!」

患部から異様な発熱をし始めた。

「これは、そういう漢方薬だから問題無い。合法だ!」

凄い言い切られた……。
か、体にいいんだ……?!

ぼ、僕なんかの傷の治りを早めてくれるために?!

「ふぁいぃぃ!」

この皮膚を焼くような熱さと刺すような痛みも体に良いんですね……?!

でもやっぱり痛いものは痛いですよ。

「あ、怪我してるな。」

蹴られた打撲傷に気付いたようだ。

「治療。」

氷室様は打撲傷にまで容赦無く……いや、進んで塗り込んで下さった。

「イッ……ぅう゛!」

感動の涙と痛さでの涙とついでに右膝毛が同時に出た。


「……治り遅くなるから一日風呂に入るな。」

僕の体を重んじてくれての命令だろう。
なんてお優しいんだ。

まるで心が通じ合った親友のようではないか。

氷室様、僕は貴方に出会えて嬉しく思います!





「氷室様ッ……好きです!」

氷室が一瞬、停止した。
――――――アレ?何か違う?

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