《MUMEI》
夏祭り
夏祭り、普通夏祭りって言ったらダチと過ごしたりいるなら彼女と過ごしたりするもん。
しかし俺は…

「聖はこのカップ麺に値札貼って、長沢君は裏からドリンクの補充ね?」
「も〜疲れた!いつまでやらすんだよ!」
「しょうがないでしょ、今日は補充しても補充しても追いつかないんだから、まー日頃タダメシ食らってんだからたまには協力しなさいな」
そう言うとお袋は倉庫部屋から出て行った。

「くそ、タダメシって…、賞味期限切れた残飯処理代逆に請求したいくらいなのに」
長沢はペットボトルの箱を持ち上げ
「いや、なかなか楽しいよ、働くのって結構良いもんだな…、それに将来はここに婿入りするかもしんないからちょっとした花婿修行の気分だし」
「―――は…」
長沢はニッコリ笑うと冷蔵庫の裏側の扉を開けガツンガツン補充しだした。
――花婿って…おいおい。
満更イヤな気にもならずむしろほんわり幸せな気分。
「よ〜し!早業〜〜!!」
タカタカいわせて値札貼りまくる!
それから次々に裏方の仕事頼まれて漸く開放されたのは9時10分前だった。


「お疲れね」
「全くだ、な〜?長沢?」
「貴重な体験させて頂きまして本当に有り難うございました、それにいつも勝手にごちそうになっていたので少しでもお役にたてて良かったです」
長沢はお袋に向かいペコッと一礼した。
お袋は一瞬驚いたが凄く喜びだした。
「ま〜!貴方本当に聖のお友達?礼儀正しいわカッコイイわでおばさん気にいったわ!ちょっと待ってて…」
お袋は金庫を開け、そしてすぐ戻ってきて

「はい!少ないけどバイト代!」
そう言いながら空身で五千円長沢に差しだす。
「いえ!いつもお弁当頂いてるし…」
「何言ってんのよ〜、逆に捨てるもの処分して貰って助かってるのよ?ほら、子供が遠慮するもんじゃないの、ほらっ」

長沢は恐縮しながら有り難たくそれを受け取った。

「有り難うございます」
「俺は〜?」
「あんたはイイの!
家族なんだから手伝うのは当然なんだから!」


――クソババア…

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