《MUMEI》 十七夜 闇の帳に閉ざされし◆◇◆ (暗いな‥) 月がない。 風ばかりが、ざわざわと不安を煽るように吹き続けていた。 (‥嫌な予感がする‥) 「姫ー!」 「風牙‥どうかしたのか」 「た‥大変‥!」 「っ‥?」 鬼門の方角だ。 彩貴は既に向かったらしい。 「私達も行くぞ」 夜桜は雪兎、琥鬼、風牙、黒手毬を連れ、邸を出た。 彩貴がいるとなると、月裔も一緒の筈だ。 夜桜は角を曲がりつつ、ある事が気になっていた。 (何故気付かなかった‥?) 妖気があれば、とっくに気が付いている。 にも関わらず、夜桜は風牙が知らせに来るまで、まるで何の気配も感じてはいなかったのだ。 ◆◇◆ 前へ |次へ |
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