《MUMEI》

「クソ…今年も祭り行けなかった」
裏口から出ると浴衣姿のギャルが楽しそうに歩いている。
「行こうよ」
「アホか、祭りは9時までだぞ?もうすぐ9時だし…っておい!!」
長沢は当然俺の手を掴み走りだした。
一足早く帰ろうとする祭り客の流れを逆行してガンガン突き進む。
「はあ、ちょっと!な〜が〜さ〜わ〜!」
人波押し退け疲れ知らずにめちゃめちゃ走らされて…、気がつけば土手まで辿りついていた。

「ヒイ…ヒイ…ハァ…ハァ」
大の字になって草の絨毯に寝転ぶ。
疲れまくって死にそう。
長沢も息を切らせながら隣に寝転んだ。

ヒュルルル…ドド〜ン!!

「―――あ……」

パチパチいいながら夜空がキラキラ光る。
「まだ花火終わってなかったんだ…」
「――ちょっとずれたんじゃない?夕方小雨降ってたし」
「そっか…」

昼間から一緒に拘束されてたけど手伝いの手順の分からない長沢は途中何回も外のゴミ箱掃除にかり出されていた。

「今日はゴメンな?」

「いや、だから楽しかったって」

ヒュルルルドド〜ン!

綺麗な花火と共に俺達は手を繋ぐ。

眼の前に立ちはだかる邪魔な電柱のせいでここは二人だけの空間。
少しの邪魔位今の俺達からしたらみじんも障害じゃない。

「――来年も来ようね?」
「うん…」
最後の派手な打ち上げ花火。

俺達は深いキスを交したおかげで完全に見はぐった。

――でも、まあいいか。

来年があるし。

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