《MUMEI》

そして、私達六人のメイドは二階から一階の食堂に向かった。


今年は、ホテルには他の客がいないから、女性陣も安心して歩けた。


「あ、蝶子ちゃん」


階段の手前で、私達は四人のメイドと合流した。


私に声をかけてきたピンクのフリルとリボンの理美さんは、文句無しに可愛かった。


そして、もう一人。


「何で、琴子が?」


私は黒いフリルとリボンのメイド服を着た琴子に驚いた。


仮装は、独身限定のはずだった。


『婚約中だから』と、愛理さんもしていなかったのに…


「俺の、リクエスト」


スーツ姿の和馬が嬉しそうに言った。


(そっか…)


私は、五月に琴子が『着てもいい』と言っていた事を思い出した。


(そういえば…)


「孝太さん。麗子さんは?」


私は、意外とナチュラルに着こなしている水色のフリルとリボンのメイド服の孝太に質問した。


俊彦と同じような黒髪のロングヘアのウィッグを付けた孝太は、髪で顔を隠しながら、『先に行った』と答えた。


『絶対嫌』と言っていた麗子さんが、一人で行くなんて、意外だった。


「ねぇ、それより、悟、どう思う?」

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