《MUMEI》

誰も話題に触れてくれないのが不満だったのか、理美さんが質問してきた。


「どうって…」


その場にいた全員が、勇さんと同じように華奢で、長身の悟さんを見つめた。


悟さんは、理美さんとおなじピンクのフリルとリボンがついたメイド服に、巻き髪のウィッグをつけていた。


「…特殊メイク」


琴子が言うように、悟さんはすっぴんの面影が全く無かった。


「同じような顔、だったのに…」


勇さんも兄の変貌に驚いていた。


「黙ってれば、ちゃんと女に見えるでしょ?」


得意気な理美さんの言葉に、私達は頷いた。


(外人モデルみたい…)


そして、合計十人になったメイドと和馬は、階段をおりて一階の食堂へと向かった。


「遅い!」


上座にあたる椅子に座るヨネおばあちゃんの隣には…

去年と同じような黒いセクシーな衣装の麗子さんがいた。


『メイドの女主人』の設定だと、隣で孝太が囁いた。

「うまく逃げたな、麗子」

厚底ローファーに苦戦する私を支えながら、俊彦が呟いた。


(似合い過ぎなんですけど…)


麗子さんの迫力ある『女主人』の演技に、私と俊彦・それに孝太の三人以外は明らかに本気で怯えていた

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