《MUMEI》

◆◇◆

「な‥」

「身勝手な妹で‥悪いとは思っている。だがこれは‥私がやらねば」

 夜桜は背を向けたまま言うと、妖の群れに近付いた。

 ざっと数えて五十は超えている。

 夜桜の二回り程もあるものから、鼠程のものまで様々だ。

 黄泉中の妖が全てなだれ込んできたかのようだった。

(どうして‥こんな事に‥)

「姫!」

「‥!?」

 駆け寄って来たのは、雪兎達である。

「姫、危ないぞ‥!?」

「ああ、分かっている」

 そう答える夜桜は、何故か微笑を浮かべている。

「姫‥?」

「彩貴達に伝えてくれ。寅の刻までには戻る、と」

◆◇◆

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