《MUMEI》

《もしもし、蝶子ちゃん?》


「うん、ごめんね。遅くなって。これから、お風呂入って寝るから、心配いらないからね」


《それって…》


「女の子同士だから、大丈夫よ。父さんも、夏に会ったでしょう?
祐介さんの親戚の歌穂子ちゃんと、あと、勇さんの彼女の律子さん」


《そっかぁ〜》


父はやっと安心したようだった。


「商店街の旅行だもの、俊彦と同室のわけないでしょ?」


《だって貸し切りだって言うし、商店街の連中って意外とオープンだから…》


(鋭いなぁー)


父は、その勘を頼りに、旅行前日『旅行中、ちゃんと様子報告してね!』と私にメールしてきていた。


「大丈夫よ。それに、私はいいって言われても、そういうの、…皆がいると思うと、嫌だし」


《そ、そうだよな、蝶子ちゃんは》


「うん」


私の言葉に、父は安心したようだった。


そして、私は父に『お土産送るから』と言って、電話を切った。


そして、押し入れの前のバックに携帯を入れた。


(ん?)


反対側…布団が入っていた押し入れのふすまが僅かに開いていた。


(閉め忘れたのかな?)


私は、ふすまに近付いた。

…押し入れが自動で開く

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