《MUMEI》

「と、俊彦? いつからそこに!?」


(もしかして、聞かれた?)

押し入れにいる俊彦の表情は見えなかった。


「嫌なんだ、俺と二人きり」


「ち、違うの。皆がいたら恥ずかしいって意味で…」

「じゃあ、今ならいい?」

俊彦が、私の腕を掴んだ。

「ダメ!二人が帰ってくるから」


その時。


「おい、今蝶子ちゃんの声しなかったか?」


「そういえば、俊彦、土産買いに行くって言ったまま…」


「「まさかあの二人!」」

(ど、どうしよう、俊彦、ここにいるってバレたら…)


絶対誤解されると私は思った。


「「行ってみようぜ!」」

「俊彦、そのまま…」


グイッ!


(え?)


パタンッ


(何で私まで隠れるの?)


私は俊彦に押し入れの中に連れ込まれた。


中は狭くて、自然と体が密着してしまう。


コンコンッ


「「蝶子ちゃん?俊彦来てる〜?」」


返事をしようとする口は、俊彦によって塞がれていた。


「「何してるの?まさか…」」


そこに、律子さんと歌穂子さんが戻ってきた。


「違う、まだ入ってない」

部屋の扉はオートロックではなく、鍵も開いていたから、祐介さんが必死で説明した

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