《MUMEI》

◆◇◆

 雪兎達が戻って行くのを見届けると、夜桜は妖の一匹に近付いた。

 だがそれは牙を剥き、姫君を寄せ付けない。

 焔を放つもの、疾風を唸らせるもの。

「な‥っ」

 このまま行けば、民家をも襲い兼ねない。

「止めろ‥!」

 妖達は夜桜の声が聞こえていない。

 うねりつつ、大行列を組んでいる。

 怪しげな色の光が、ぼう、と影を浮かび上がらせた。

(一体‥何が‥‥)

「脅威のせいだ」

「‥!?」

 その声に、夜桜は聞き覚えがあった。

◆◇◆

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