《MUMEI》

俊彦は、土産を買いに行くと言って戻ってこない。


私は、用事があるからと言って部屋に残った。


この二つの事実から、四人は私の用事が『俊彦と一緒に土産を買うこと』と結論づけた。


そして、私達はまだ帰ってきていないか、もしかしたら散歩に出かけたかもという事になってしまった。


「「気をつかってくれたかもよ?」」


(違う!)


私は出るに出られず困っていた。


「「寝る前、ちょっとだけでも二人きりで過ごさない?」」


「「でも…」」


(ちょっとちょっと!)


話は何やら妖しい方向に向かいつつあった。


「皆、結局イチャイチャしたいんだよ」


俊彦が、身動きのとれない私を抱き締めた。


(ちょっ…)


「…イチャイチャ、憧れてたんだ、実は」


ふすまの向こうからは、祐介さんの真剣な声が聞こえた。


「でも、私、まだ高校生だし、恥ずかしい…」


「最後まではしないから、ちょっとだけ? 嫌?」


「ううん…でも、隣に聞こえるのは」


「このくらいなら、聞こえないよ」


「そうよね…」


(いや、隣はいいけど、こっちは全部聞こえてます!)


私はどうしていいかわからなかった。

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