《MUMEI》

「帰るわけないじゃん」


俊彦が私の布団に入ってきた。


「い、…いい加減にしてぇ!」


私はついに、叫んでしまった。


「「何!?」」


慌てて律子さんが電気をつけた。


「もう、ヤだぁ…」


「ご、ごめん、蝶子。悪ノリしすぎた…」


そこには、涙ぐむ私と焦る俊彦の姿があった。


「「どうし…俊彦!お前」」


踏み込んだ祐介さんと勇さんも


起き上がった歌穂子さんと律子さんも…


私達の様子と、俊彦が閉め忘れた押し入れの戸を見て、全てを理解した。


「いや、これは、蝶子とイチャイチャしたくて、つい…」


「やり過ぎ!」×4


そして、この騒動は、麗子さんに報告された。


旅行が終わった後、各店舗には、俊彦のメイド姿の拡大写真が貼られていた。


ちなみに…


店頭ではなく厨房や事務所に貼られたバージョンには

『変態注意』


と印刷されていた。


さすがに、私も三日は俊彦と口を聞かなかった。


(たまには、いいわよね)


それは、付き合い始めて初めてともいえるケンカだった。


…というより、私が一方的に怒っていた。

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