《MUMEI》
友達
「上男くん?」
最初に声を発したのは教師だった。

上男は冷静に(頭の中の天使と悪魔のせいで自分でも意味不明な発言をしかも大声でしてしまった割には冷静に)対処した。

つまりまず黙り込んだ。
頭の中で言葉を繰り返してから言った。

「・・何でもないです。」
無限の可能性を秘めた魔法の言葉
“何でもないです”

ともかく深く追究できる人がこのクラスにいなかったため、これで済んだ。


授業が終わりさっさと帰りの支度をしていた。
今日は早く帰ろう。

帰って寝よう。

ゲームしてから寝よう。
先生か友達に何か訊かれても困る。

誰かに呼ばれる前に帰ろう。

「上男くん!」

呼ばれた。

友達だった。

「やっぱり何でもない。」と上男は答えた。

「いや、こっちが話しかけたんだよ。」と友達「何で叫んだの?さっき。」

「ちがうんだよ。僕のせいじゃないんだよ。」

「じゃ誰のせい?」

「僕の頭の中の天使と悪魔だね。」

「ちょっと、言ってる意味分かんないけど。まあ散々な目にあったね。」

「うん、散々な目にあった。」

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