《MUMEI》

帰り道はのんびりと。
さっき来た時より人波も若干減った。


屋台によっては後片付けが始まっている。

「聖ちゃん、さっきのお金でなんか食べよ?」
「そうだな、おごって貰った事ないしごちしてもらお」

俺は真っ先に焼きそば屋へ向かう。
長沢は二個買ってついでに隣のフランクフルトも買った。




「何黙ってんだよ…」
何故かいつもの無表情で黙り歩く長沢。
俺の歩調も無視して歩くスピードが凄く早い。

「な〜が〜さ〜わ〜!」

不安になって腕を掴むと長沢はいきなり立ち止まった。

「――聖ちゃん…俺…今まで聖ちゃんに何もしてなかった…」

「――は?」
「ジュース一本買ってあげたことなかった」

――なんだ。

「イイって、そんな事…」

「良くない!俺聖ちゃんに何か買ってあげたい!!」
「おい〜〜!!」
また手を掴まれ早足で歩かされだす。
周りの目線がイタイ!恥ずかしい!!

「長沢!今これ買って貰ったじゃん!これで十分だよ〜!」
「ダメ!最後だからって100円にしてもらったしそれに小銭で買っちゃったから!今日のバイト代で…俺が働いた金でちゃんと聖ちゃんにプレゼントしたいんだ!!」

「――長沢…」


ジ〜ン…。


広い背中見ながら俺は気合いを入れてついて行く。


手を繋いでいることなんか…、全然恥ずかしいなんて思えなくなった。


――長沢…好きだ。

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