《MUMEI》 私は心の中で咲子さんを恨んだ。 (まぁ、でも、咲子さんも来れないよね) 明日は『クローバー』が通常営業の上に、午後からは、双子の同級生の親達の予約が入っていた。 「私、専門的な知識ありませんよ?」 「いいの。私は、薫子みたいに難産じゃないって言われてるけど、やっぱり不安だから、付き添いが欲しいの」 普段強気な瞳さんに、そう言われると、断る気にはなれなかった。 私は、薫子さんが『頑張れたのは、一番は克也がすぐ側で励ましてくれたからなの』と言っていた事を思い出していた。 「私じゃ、春樹さんのかわりにはならないと思いますけど、それでもいいなら…」 「ありがとう!」 そして、私はその日は瞳さんの部屋に泊まり… 出産予定日の、十二月十日の朝を迎えた。 私は、言われた通り、瞳さんに付き添っていた。 瞳さんの陣痛の間隔が徐々に短くなり、いよいよ、その時がきた。 私は、力む瞳さんの手を握り、流れる汗を拭いた。 「瞳さん、頑張って下さい」 励ましの言葉は、月並みなものしか出て来なかった。 「頑張って!」 その場にいる全員が、瞳さんを励ます。 瞳さんは頷く。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |