《MUMEI》

「今日は、本当にありがとう。ごめん、俺が頼りないから…」


「い、いえ…」


年上で、いつも皆を引っ張っている春樹さんに頭を下げられ、私は慌てた。


「本当に、ありがとう、蝶子。
すごく、心強かった。
ここで、産めて良かった」

(そんな…)


「私、何もしてないし、頑張ったのは、瞳さんですよ」


私は、瞳さんを見て女性の…母親の強さを学んだ気がした。


その後二人は、私にちなんだ名前を付けたいと言ったが、私はそれを断った。


何故なら、一番先に二人が考えた名前が『上羽(あげは)』で、次にあげた名前、『蝶太(ちょうた)』だったから。


そして、結局、二人の間に産まれた男の子は、『樹(いつき)』と名付けられた。


産まれたばかりではわからなかったが、樹君は、春樹さんによく似ていた。


こうして、退院してきた薫子さんと花雪ちゃんも合わせて、また新しい商店街の仲間が加わった。


樹君の誕生祝いに、春樹さんは店で一番高い薔薇を商店街の皆に配って歩き…


店長の夏樹さんに、かなり怒られていた。


しかし、怒られているのにその顔は気持ち悪いくらいニヤニヤしていたと夏樹さんは『クローバー』で愚痴っていた。

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