《MUMEI》

自宅通り越して駅前まで来た。
そして真っ直ぐに宝石店に連れられた。

「もう店じまいだよ、ホタルの光流れてる…」
「いーから、こっち…」
グイグイ引っ張られてカウンターへ。
――つか値段たかっ!
桁が二つ違う…。
チラと長沢を見ると、ほら気まずい表情。
「よろしければ出しますよ?」
いきなり店員に話かけられて俺は本気で飛び上がった。
「あ、あの…、」
もう出ようって長沢のシャツを引っ張る。
そしたら…

バンッ!!

「これで買えるコイツに一番似合う指輪ください!!」

カウンターにだされた五千円。

一瞬の沈黙の後

「はい、かしこまりました」

三十代後半っぽいめちゃめちゃ綺麗な人は次々と指輪をだしてくれた。
名札には店長、折原って書いてある。
「これ殆ど五千円じゃないんですけど…」

殆どの値札、予算だいぶ越えてる。
「今日はお祭りですから、それと…他のお客様には秘密にして下さいね?」
気にいったの見つけ、それに決めるとなんともう一個付けてお揃いで二個五千円にしてくれた。
なんでも店長さん新婚で幸せのお裾分けだって。
有り難たく受け取り俺達は店を出た。

俺の部屋に戻るなり抱き合ってキスが始まった。
今日疲れてるけど俺もエッチしたくて堪らない気分。
キスが終わり服脱がされるのかと思ったら長沢は俺から離れしゃがみ込んだ。
「指輪つけよ?」
「――うん」
各々の紙袋から出して小さな箱を開ける。
若干太さの違うシルバーのホージーのリング、石もなくてシンプルなところが一発で気にいった。
長沢は俺の左手を取り薬指にはめた。
「将来店長になったらもっと豪華なの買ってあげるね?」
「――うん」
俺もお返しに長沢の指にめちゃめちゃ緊張しながらはめた。
「聖ちゃん…、愛してる…」
「俺も……長沢の事……」

俺から身をのりだし膝立ちになり長沢の唇に近づく。

バンッ!!

「二人とも!お寿司差し入れ!」
一瞬で一メートルはぶっとんだ俺。
ドアにはパックを持ったお袋。
「今日は二人とも頑張ったからちゃんと新しいお寿司持って来たわよ!これ食べて明日から勉強頑張るのよ?」
感謝しなさいと言わんばかりの笑顔を振り撒きお袋は出て行った。
テーブルには焼きそば、フランクフルト…つやつやの新しい…寿司。
「――腹減った…」
「そうだね…」
さすがの長沢も性欲より食欲が勝った…。

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