《MUMEI》 独占十二月の三回目の水曜日。 前日俊彦の部屋に泊まった私は、昼間は琴子と一緒に出かけ、夕方、また俊彦と会っていた。 「どうしてそう人がいいんだ、蝶子は!」 「え?」 俊彦の希望で、二人だけですき焼き鍋を囲んでいると、俊彦が突然不満を訴えた。 「今週は琴子で、先週は瞳!その前は薫子! 人の為に動きすぎ!」 「だって、しょうがないじゃない」 「瞳と薫子はいいけど、今日のは断っても良かったんじゃない?」 琴子の用事は、『結婚式の衣裳の最終確認に付いてきてほしい』というものだった。 琴子は、衣裳は既に決めてあったが、小物とメイクについて悩んでいた。 『当日和馬を驚かせたいから』と、琴子は衣裳選びの時は薫子さんに付き添ってもらっていたが、さすがに今回、出産直後の薫子さんには付き添いを頼めず… 私を頼ってきたのだった。 「商店街で一番琴子と仲良いの、私だし…それに」 「それに?」 俊彦の目が鋭くなる。 (言ったら、呆れるかな?) 「それに、結婚式の衣裳、…興味あったし。 わ、私達の時に参考になるかなって…」 私の言葉に、俊彦はため息をついた。 「…怒った?」 前へ |次へ |
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