《MUMEI》 「そんな可愛い理由をそんな可愛く言われたら、怒れないじゃんか…」 俊彦は、そう言って、空になった器を私に渡す。 私は、肉を多めに入れて、俊彦に返した。 「ごめん、ね?」 「…皆に愛される蝶子じゃなくて、俺だけの蝶子だったら良かったのに」 俊彦は、チラッと私を見て、またため息をついた。 「でも、それじゃ、俺の好きな蝶子じゃなくなるし…」 いじけるように、箸で肉をつつく。 「食べ物で遊ばないの」 「はいはい」 最近俊彦は、私が細かく注意するせいか、箸の持ち方も食べ方も綺麗になってきていた。 きちんと箸を持ち直した俊彦は、その後のしめのうどんもしっかり食べた。 「リンゴ食べれる?」 「うさぎにしてくれたら食べる」 (ちょっと機嫌直ったかな?) 私はうさぎ型に切ったリンゴを俊彦の前に置いた。 「食べさせて」 (う…) 俊彦は、口を開けて待っている。 (まぁ、いいか) それで機嫌が直るなら、いいと思った。 俊彦は、リンゴを三切れ食べた。 「あと、蝶子が食べたい」 「明日、仕事だから一回、…なら」 「了解」 前へ |次へ |
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