《MUMEI》
幸せな日常
僕は 八歳までの 記憶がない。


フラフラと 歩いていて 道に 倒れていた所を パン屋の夫婦に 助けられたのだ。


ここは 街外れにある パン工房 「ホルン」


無口な 夫 ジャンニ の焼く 美味しいパンと 愛嬌の良い 妻 ピア が 評判の店。


僕は ここに お世話になっている。


僕の 名前は カイト。記憶喪失の僕に 二人が 付けてくれた。


二人は 最愛の息子を 事故で 亡くしていて、偶然 出逢った 僕を 息子のように 可愛がって くれた。


「ピア〜ただいま。」

「あら、カイト 今日は 早いのね。」


店の奥の ジャンニも 時計を見ながら 頷く。


「今日は 寄り道しなかったからさ!」


そう言って、目の前にある、ベーコンロールを 手に取り 口に運んだ。


「こらっ!店の物に 手を出さない。」


「フワァ〜イ。」
僕は モゴモゴしながら 部屋へ戻って行った。

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