《MUMEI》

「関谷、休みながらでいいから聞け。」


「はい。」


「4得点は上出来だ。」


「…ども。」


「だけどな、早い段階で取りすぎた。警戒されてる。」


「…はい。」


「カットも悪いプレーじゃないんだけどな、前半の最初で多様しすぎる必要はない。」


「…」


「得点だけじゃなく、精神的にもダメージを与えるのがカットからの速攻なんだよ。」


「はい。」


「ここぞって時まで飛び出すな。無理に試合展開を早くしたって少数精鋭の僕たちの方が不利だからね。」


「はい。」


「じゃあちょっと休んどけ。次出る時にはとっておきの必殺技教えてやるから。」


「…必殺技?」


「スピードがあるお前ならではのな。」


「はぁ…?」


とりあえずゲームメイクはそのまま椎名に任せる。


前半残り13分、キーマンは千秋と関谷だ。


「そうだ恭介、さっきは助かったよ。どうもね。」


「7メートルのこと?」


「うん。」


「ふふ。」


変な笑い方しやがって…


「何?」


「あれはヤマトからもシュートを止めた俺のテクだからな。」


…ヤマから?


「あ!!お前!!」


「あの時の7メートルもああやって止めたんだよ。」


僕たちの高校最後の試合。


ヤマ対恭介の7メートル。


勝ったのは恭介だった。


「この野郎…」

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