《MUMEI》

◆◇◆

「───────」

 夜桜が眠りに落ちると、狐叉はそうっとその黒髪を撫ぜつつ囁く。

「‥ありがとう‥」

 夜桜が狐叉を受け入れ、名を付けなければ、彼女は今、只の七尾であったに違いない。

 狐叉もかつては人を恐れていた。

 彩貴のような陰陽師は、特に目の敵にしていたのである。

 だがそれは、すぐに打ち砕かれた。

 夜桜の、ある言葉によって。

◆◇◆

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