《MUMEI》

事務所に戻ると、瞳とみづきが待っていた。
「ただいま!」
俺は全身傷だらけなので、二人ともびっくりしていた。

「滝、どうしたの!?その傷…」
「またやらかしたの?」
「カルテーニに勝ったんだよ。もうあいつは追って来ないだろう…」
そういうと、二人は喜んで「良かったじゃない!これで事務所も安定するわ−」
(瞳が言う事か…)
「滝、瞳は相当心配してたわ。半分連れ去られたようなものだもの」

俺は済まなそうな顔をした。

「ごめん…心配かけたな」
「仕方ないわ、前世に関わる事だしね」

その時、玄関から人の気配がした。
純と智嬉の声がする。帰って来たらしい。
ガチャッ
「ただいま」
「俺は疲れた…寝る」

「あんた達!私らを心配させて置いて、ごめんもないの!?」

仁王立ちしたみづきは鬼のようだ。
二人は唖然として…
「ごめんなさい」

「それでいいの」
「滝よりリーダー代えたほうがいいんじゃないか?」
智嬉は苦笑いする。皮肉を言われた自分は言い返す。「俺が一番能力が高いんだよ!低い奴がリーダーになってどうする…」

「カルテーニには勝てたとして…問題はラーテよ」
瞳が話を割って出てくる。机越しに純は叫ぶ。

「あいつは幹部だった…カルテーニを守る敵だ。いつか仕返しにやって来るぞ!」
「でも、今の私達で勝てるとでも思うの?」

俺は白いジャケットを脱ぎ、いつもの紺色のタンクトップになる。
「勝てるさ。そう信じるんだ」
「昔の記憶に弱いのに?」みづきが指摘してきた事は正しかった。俺はまだフラッシュバックという天敵が残っていた。

「大丈夫…なんとかなるさ」

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