《MUMEI》

『…………本当?』




『…ホンマや。
ただしお前がホンマに後悔しやへんのかったらな。』



『…しない。』




私は言い切った。




それから、ももたはゆっくりと私を抱きしめ、ベッドまで連れていった…。




慣れた手つきで、キスをして服を脱がしていく…。




でも、私がいつ“やめて”と言いだすかと待っているかのように…
ひとつひとつ確認するように…
ゆっくりと進めていくのが分かった。




でも、私は最後まで何も言わなかった…。




最後…




『痛かったら言いや。』




と言う、ももたにも頷くだけで精一杯だった…。




『大丈夫か?無理しぃなや…。…大丈夫か?』




と何度も聞くももた…。




『…終わったで。』




ももたに言われて、痛くて…情けなくて…涙がでた…。




“私、何やってるんだろう…。ももたまで、巻き込んで……。”




『…ありがとう。
…ゴメンね。…ゴメン。』




それしか言えなかった。




夜が明ける頃…
眠れず天井を見つめていた私の隣にいる、ももたが黙ってシャワーへ行った…。




私は、服を着て黙って自分の部屋に帰る…。




その朝…私は、吉沢さんにメールをした。




┏━━━━━━━━━┓
┃ごめんなさい。私、┃
┃風邪ひいたみたいで┃
┃今日は会えない。 ┃
┃たいしたことないか┃
┃ら、心配しないで。┃
┃うつすといけないか┃
┃らお見舞いにも来な┃
┃いで。ゴメンね。 ┃
┗━━━━━━━━━┛




私は、メールを打ってから携帯の電源を切った…。




しばらくして、隣のドアが開く音がした。




“ももた…。店に行くんだ…。”




何もなかったかのように、店に出かけていく、ももたを想像して、切なくなった…。




結局…吉沢さんにも会えず、ももたともこのまま終わっちゃう…。




自業自得なんだ…。




見栄張って、嘘つこうとした罰だ…。




夕方…。




部屋の片付けも、一段落した頃…玄関のチャイムが鳴った…。




『…はい。』




『…俺、吉沢だけど…。』



“吉沢さん!?”




慌ててドアを開けると、紙袋いっぱいの荷物を持った吉沢さんが立っていた…。




『…どうして!?』




『…心配になってさ。
携帯も繋がんないし…。
風邪どう?顔色悪いな。』




持ちきれない程の荷物は、私に“お粥”を作るため買ってきてくれたのだと、照れながら笑った…。




『…ごめんなさい。
………大丈夫だから。』




私達が、玄関先で話していると吉沢さんが何かの物音に気付き、チラッと横を見た…。




私もつられて覗きこむと、仕事を終えた、ももたが帰ってきた…。




『…ももた!?』




私は、思わず呼び止めてしまった…。




『ももたって…。
あぁ〜!こないだ言ってた同級生の……』




ももたは、吉沢さんの言葉を遮り、睨み付けながら言った。




『五十嵐です。ども。』




『…あっ!…どうも。
…百瀬さんの同僚の吉沢です。……はじめまして。』




『…同僚?』




ももたは、また吉沢さんを睨み付けた…。




吉沢さんも、ももたの異様な雰囲気にかなり動揺してる…。




“どうしよう……。
この空気なんか変だよ…。”

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