《MUMEI》

「千秋にはなんて?」


「ディフェンスの足見ろって。」


「足?」


「そ。さっきのお前と同じかな。」


「は?」


「ディフェンスも誘導してんだよ。どっちに仕掛けてしてくるか。」


「どうやって?」


「片足を前に出すんだ。」


「それで?」


「例えば左足を前に出すと、攻撃側は無意識に右側を攻める癖があるんだよ。」


「つまり、どっちに来るか予想できると。」


「そうそう。だから千秋にはあえて攻めにくい方を攻めさせたのさ。」


「なるほどね。」


僕と恭介の話を、関谷が聞き入る。


(全然気付かなかった…)


西条の攻撃。


「突き放しなさい!!」


西条の監督が叫ぶ。


(あの女…)


まるでハンドのこと知らなそうな顔してたけど、やっぱ試合になると熱くなるんだな。


「今の聞きましたか?」


「うん。」


「明らかに態度が変わったな。」


「そうですよね。」


「油断するための作戦だったんじゃない。」


「自分もそう思います。」


「翔太、恭介。」


「え?」


「あの女の化けの皮はがしてやろ〜ぜ。」

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