《MUMEI》

「サイドオッケーです!!」


初試合の千秋が張り切って声を出す。


クロは千秋に攻撃に対して特別な指示を与えていたが、ディフェンスに関しては特に変わった指示は出していなかった。





「関谷みたいにカットに行く必要はない。お前はお前のマークマンをしっかり守ればそれでいい。」


「はい!!」


「あ〜、あと…」


「え?」


「声出すの忘れんなよ!!」


「はい!!」





変わったプレーを指示しなかったのは、必要がなかったからだ。


カットから点を取っていた赤高は、それに拘り本来のディフェンスとは違ったディフェンスをしていた。


今思えば、それが西条の作戦だったのかもしれない…


本来のディフェンスといっても、赤高のそれはまだまだ下手くそで未完成なものであった。


しかし…


赤高にはそのディフェンスを補える要素がある。


キーパー村木。


経験が不足している為、サイドシュートやランニングシュートにはまだまだ弱いが、ロングシュートに関して、村木のセンスはずば抜けた物があった。


「バシッ!!」


村木が止める。


「ルーズボール!!」


ボールを取ったのは、沖。


日高、椎名の2人が飛び出している。


西条も1人だがディフェンスが戻っている。


「こっちだ!!」


ボールは椎名へ。


椎名と日高のランパス。


そして椎名のランニングシュートが…


「ナイッシュー!!」


炸裂。


6対6。


同点。


前半残り時間。


5分。

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