《MUMEI》

醤油と味噌を見付けた。醤油は高かったが仕方ない。

心の中で舌打ちをしながら味噌をカートの籠に入れる。

「やあ、久し振り。」

醤油に伸ばした手に重なる手。

「…………ああ。」

嫌な再会だった。
まさか、此処で逢ってしまうなんて。

「近いの家からは?」

雰囲気が違う、以前はもっと仕事ばかりの人間だった。

「仕事はどうしたの。」

俺の質問に声を出さずに笑った。

「辞めた。辞めさせられたに近いかな。」

それは結構、驚いた。

「あ、そう。」

でも、俺には関係無し。

「素っ気ないな……。俺、かなり参っているんだ。
慰めてくれないかな。

あの、公園のフェンスでやったみたいに……さ。」

腰に手が回る。
セクハラだ。
かつての公私混同しない彼は尊敬に値した。
だから、体だけの付き合いが出来たのに。
やけに生やした髭が渋くて、似合っているが俺には微塵も興味は無い。

「――――――嫌だって言ったら?」

これは俺流優しい否定の仕方だ。





「………………昨日、あの公園で彼を見たよ。」

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