《MUMEI》
バカな看護師様
〈あの人馬鹿だったんだよ、看護婦のくせして、高血圧の薬飲まないでさぁ〉

私の仕事、歯科衛生士もなかなかきつい。患者相手と言っても、客相手といっても過言ではない。色んな客を相手に四苦八苦が現実だ。  午前の客相手を、済ませ、昼休みは二時間ほど。冷凍食品ばかりの手抜き弁当を咀嚼して飲み込み、保育園の大事な大事な王女さまを、思い出す。今では、私にはかけがえのない娘になっていた。それも、旦那様のおかげ、保育園の先生のおかげ、母のあの一言のおかげさまさまである。〈ブルブルブルブル‥〉
白衣のポケットに入れていた携帯のバイブが体を震わした。メールかと、みると、すぐ下の妹の美香からだった。
「益美!お母さんが倒れたって、今から病院いくよ、あとから来て!香美にも連絡したから」
それだけいい話して、即切り。簡単な日本語をつなげただけの言葉なのに、私には意味がわからなかった。意味がわからない私の脳に反して、体はガタガタ震えていた。
歯科医に話し、職場をあとにした。
車を運転して母の勤務している、病院へ向かう。 おんぼろカーステレオからは、今は流行の女性歌手の歌が流れている、題名は〈ふるさと〉故郷の両親を想う曲だ。偶然にも程がある!怒りにも似た感情がこみあげていた、まだ私のアクセルの膝ががたついていた。
病院にはどう走りたどいたかは記憶が無い。ナースステーションで部屋を聞き、廊下は走るなと識っているが走り続けた、全力で走ってるつもりだが、すれ違いに看護婦の声が聞き取れたので、きっと、早走りくらいだろう。
「トイレで倒れたのよ、意識遠退く中、自力で緊急ボタンを押したらしいよ、血圧高いのに、薬きちんと飲まなかったみたい、脳梗塞か心麻痺かもね」
私の母のことかはわからなったが、後で私は母のことであると知る。

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